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【突発的SS】美人に骨抜き

「……昨日、ひと目惚れした」
 隣りの机で書類を片付けている同僚が、ぼそっと呟いた。
 いつもはもっと張りのある明るい声を出す同僚が、呟くように告げたひとこと。
「は? お前、前にナンパされたやつとまだ続いてんだろ?」
 同僚はすっげー精悍な顔をしてるせいか、男女関わらずモテる。
 ほとんど相手が切れたことがないくらいだ。
 
 ちょっと背が高いくらいで、これと言って特徴のない眼鏡の俺には想像もつかない世界に生きていると思う。

 その同僚が、ひと目惚れ。
 激しく似合わない。

「見惚れるくらいすっげー美人だった。どこで働いてるんだろう。探してみるか。名前、なんてーのかな。きっと可憐な名前なんだぜ」
 遠くを見ながらひとりブツブツ何かを呟いてる同僚は、はっきり言って精悍な顔が大なしだった。
 崩れてるぜ、その万人を魅了する顔が。
 俺は魅了なんかされないけどな。

 だって俺には恋人がいるし。
 すっげー美人で床上手で優しくて年上の美人が。
 欠点は料理を作らせると、人を秒殺できるほどとんでもなく不味いモノが出来上がるってことくらいだけど、それも可愛いよな。
 すごい照れた顔で口を尖らしながら
「俺に料理作らせるお前が悪いんだろ」
 なんて言っちゃって、ホント俺の恋人マジ天使。
 
 恋人のことを思い浮かべてにやけていると、同僚が「なあ」と俺の方を向いて声を掛けてきた。

「声を掛けるって、どう声を掛ければいいんだ? お前、恋人と 付き合ったきっかけって、お前がナンパしたからだろ?」
「ハァ?!」
 
 真顔で訊いてくる同僚の言葉に、思わず目を剥いてしまう。
 
 俺の驚いた顔を不快に思ったのか、同僚は眉をしかめて少しだけ視線を下に向けた。

「俺、声を掛けられることはたくさんあったけど、自分から声掛けたこと、一回もねえんだよ」

 ……。
 残念なイケメンがいる。
 ここに、残念なイケメンが。

「お前が言われてきたみたいに、言えばいいんじゃねえの?」

「でも俺、あれ言われるたびに「そんなありきたりなこと聞き飽きたぜ」って思ってたんだぜ? あれだけ美人なんだし、そういうの言われ慣れてるだろうし、そしたらきっと同じこと思うと思うんだよ」

 いや、そんな鬼畜なこと思う人、あんまいねーから。
 一般人の俺が言うんだ間違いない。
 別次元イケメンはもう、ほっとこう。

「あっそ。じゃあ奇抜なことでも言って目を向けさせてみたらいいんじゃねえの。じゃ、俺、帰るから。あいつが待ってる」

 難しい顔をしてる同僚に手を上げ、俺はにやけ顔のまま会社を後にした。



 会社から一駅先の駅前の花屋。
 その二階に、恋人が働いてるフラワーアレジメントの教室がある。
 通ってくるのは大抵仕事のために資格を取りたい人だということで、夕方から夜にかけてがメインでやっている教室だ。
 俺はそこに通っていて、教室が終わったら一緒に帰って、一緒に飯を食って、一緒に風呂に入って、一緒のベッドで寝ている。
 ああ、幸せな毎日だ。


「はい、じゃあ、今日はここまでにします。道具の手入れを忘れずに。来週は全体のバランスの見方を少しずつ勉強しましょうね」

 そう締めくくり、恋人はチラ、と俺の方を見てから、にっこり笑った。
 皆がほう、と息を吐くほどの美人。
 俺にはもったいないと思うけど、それを言ったら怒られた。

「俺が、お前を選んだのに、もったいないとか言うなよ。手放してやらねえぞ」

 そう言ってさらに俺を求めた姿は、壮絶に色めいていて美しくて艶やかだった。

 外で待つことしばし。
 笑顔で恋人が出てきた。
 教室は基本週一。
 その週に一回だけの一緒の帰りを、俺たちはデートみたいに楽しんでる。

「お待たせ。寒くなかったか?」

「全然。これからお前と一緒に帰れると思うと、寒さも吹き飛ぶ」

「もう、ずっとそれ言ってる。飽きないな」

「全然飽きません。もう一生離しません」

 俺の言葉に、恋人は嬉しそうに笑い声を上げた。

「俺も、お互い爺さんになるまで一緒にいる。縁側で猫飼って膝に乗せて日向ぼっこする」

 そんな壮大な夢を語られ、思わず路上にも拘らず抱き締める。
 恋人のぬくもりがもの凄く心地いい。
 くっついたまま二人で駅へ足を向ける。



「お前……」

 不意に声を掛けられ、恋人から視線を動かすと。
 
 そこに、同僚が呆然とした顔で立っていた。
 俺と恋人を指差している。

「お前……なんで天使と……腰持って……」

 ああ、同僚がひと目惚れしたのって、俺の恋人だったのか。
 だって美人だもんな。と納得する。

「こいつ、俺の恋人。っつうか伴侶。将来の約束どころか老後まで約束してる」

 引き寄せてそう宣言すると、恋人が嬉しそうに俺の身体に腕を回してきた。

「もう、大好きだ」
「俺も。ってことで、諦めてくれ」
 
 同僚に笑顔を向けると、すごい顔で咬みつく勢いで同僚が食ってかかってきた。

「はいわかりましたなんて諦められるか! 俺の天使に手を出すんじゃねえ!」
「天使って、違うから。俺の恋人だから」
「うるせえ! 平凡ななりしてふざけたこと言ってんじゃねえ!」

 と同僚が手を構えた瞬間、恋人が俺から離れて同僚に近付いた。

「わ、馬鹿やめ……!」

 近付く恋人を制止すべく手を伸ばすも、間に合わず。

 恋人は同僚に抱き付いた。
 
 ……と思った瞬間、同僚はひっくり返って地面に背中をつけていた。
 一瞬過ぎて何が何だかわかってない同僚を覗き込む様に、恋人が見下ろす。
 すっげー冷たい顔で。ゾクゾクする。

「あのさ、俺、こいつの恋人だってさっきからこいつが言ってんだろ。誰だよ天使って。頭腐ってんじゃねえの? こいつのどこが平凡なんだよ。可愛いだろ。眼鏡して可愛いだろ。ひょろっとして眼鏡して照れたように笑って、可愛いだろ。もう最高に。二度とそのツラ俺に見せるんじゃねえよ、クソが」

 最後に同僚のすぐわきのアスファルトに、唾をペッと吐き出す。
 そして、いつもの笑顔に戻って俺のところに帰って来た。

「さ、帰ろ。俺たちの家に」
「ああ。さっきの、超かっこよかった。ゾクゾクした」
「ふふ、そう言ってくれるの、お前だけだよ。他のやつはビビッて固まっちまうんだよ」
「あんなにカッコよくて綺麗なのに。もったいないなあ」
「お前がそう思っててくれるだけでいい」

 そんな会話が聞こえたのかどうなのか、道路に残された同僚が立ち上がれたのは一時間くらい後だったとかなんだとか。

 幸せな俺たちには関係のないことだけどな。


 終わり



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突発で書いたSSでした。
お粗末様でした。
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